グラフ1-1 小学校児童の学力と1世帯当り税額総額との相関

相関係数 0.639454
なお、2004年のデータを用いたのは、2005年以降の[児童・生徒の学力向上を図るための調査]で得られているはずの市区町村別のデータが見当たらないためである。また、課税対象所得ではなく税額を用いたのも東京都が市区町村ごとの世帯当り課税対象所得を公表していないことによる。
グラフ1-1における特異なデータ(○の部分)は千代田区、港区及び渋谷区であるが、この異常値を除外するとグラフ1-2のようになる。
グラフ1-2 小学校児童の学力と1世帯当り税額総額との相関(異常値除去)

相関係数 0.752668
以前より所得水準と子供の学力には相関関係があると言われてきたが、諸経費控除後の課税所得に対応する世帯当りの納税額と子供の学力には相関関係があると言わざるを得ない。最も懸念されることは、経済的格差により学力差が生じていることにより、所得の多い家庭の子供は多くの場合将来的にも安定した一定以上の収入が保障されるであろうが、所得の低い家庭の子供は更に貧困化する負の再生産に陥る危険が既に生じていることである。このような危機を克服するためには、適切な経済政策・雇用政策を実施して雇用を安定させ親の所得を保障することと併せ、公財政教育支出を拡大することが必要不可欠な政策となる。
ところが、一連の公財政教育支出うち、就学援助給付は構造改革に乗じた三位一体の改革により準要保護者に対する国庫補助金を廃止(2005年度)し一般財源化している。もともと準要保護者自体が全国共通の認定基準がなかったことも原因となり、この国庫補助金の廃止と市町村の一般財源化を節目に多くの市町村で就学援助給付を縮小する傾向が生じている。2005年度以降も経済状況は好転せず、特に2008年9月のリーマン・ショック以降一層の厳しさを増した経済状況の下で、就学援助の給付対象である要保護者・準要保護者共に増加しているにも関わらず、である。
また、教育や社会福祉に関する国庫補助金の廃止とその市町村の一般財源化は地方分権というもっともらしい美辞麗句を纏ったナショナルミニマムの否定でもある。
特に教育に関しては、教育基本法第4条第1項で[すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない]と教育の機会均等を保障し、同条第3項で[国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない]と国と地方自治体の責務を規定している。したがって、三位一体の改革による準要保護者に対する国庫補助金の廃止とその市町村の一般財源化は教育基本法の規程はもとより、その淵源である日本国憲法の精神すら蹂躙するものであり看過することはできない。
まして、教育は多くの子供が確固たる情報リテラシーを会得することで、我が国の経済社会を不断に発展させ今後本格化する少子高齢化社会を乗り切るためにも必要不可欠の投資であり、決して少数の[エリート]養成であってはならないのである。
江戸時代から明治時代に至る近代化は一握りの[エリート]により達成されたものでは決してなく、国民の多くが高い教育水準であったが故に近代化を受け入れることができる大きなキャパシティを有していたからに他ならない。我々はこうした過去の歴然たる教訓を見失ってはならないのである。エセ経済論やエセ財政論などに惑わされて、国家戦略を欠いた日和見をしてはならない。
例えば、世帯年収や学校外教育支出と学力との相関に関しては、文部科学省による[お茶の水女子大学委託研究・補完調査について](耳塚寛明
2009年8月4日)がある。http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/045/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2009/08/06/1282852_2.pdfまた、松本大輔衆議院議員のウェブサイトには、東京23区における就学援助給付率と学力の相関を示す資料がある。http://www.dakara-daisuke.com/pdf/060206kakusa.pdf